Clash シリーズのクライアントを使用する際、最も重要な体験は「自動分流」です。国内のウェブサイトにアクセスする際の快適な直接接続、海外のサービスを利用する際の安定した加速、これらすべてを支えているのが、細心の注意を払って記述されたプロキシルール(Rules)です。2026年、Clash Meta (Mihomo) コアの普及に伴い、ルール構文も大幅に強化されました。本記事では、Clash のコアなルール構文を深く掘り下げ、特に DOMAIN-SUFFIX、IP-CIDR、そして RULE-SET の実戦的な使い方を徹底解説します。この記事を通じて、「とりあえずの設定」から卒業し、自分に最適なプロキシ環境を構築する「エキスパート」を目指しましょう。
一、大原則:ルールマッチングの優先順位
具体的な構文を学ぶ前に、Clash のルールエンジンの最も重要な大原則を覚えておく必要があります。それは、「上から下に実行され、最初にマッチしたものが適用される」ということです。
これは、ルールの記述順序が極めて重要であることを意味します。例えば、最初のルールに MATCH,DIRECT と記述してしまうと、その後にどんな詳細なルールを書いたとしても、すべてのトラフィックが直接接続(直結)されてしまいます。2026年現在、推奨される標準的な構成順序は以下の通りです:
- 広告・追跡のフィルタリング:一番上に配置(REJECT)。
- 特定のドメインへの精密マッチング:個別のサイトへの特別な処理(DOMAIN)。
- キーワードマッチング:特定の文字列を含むドメインの処理(DOMAIN-KEYWORD)。
- サフィックス(後方一致)マッチング:ドメイン全体とそのサブドメインの処理(DOMAIN-SUFFIX)。
- IP アドレス・ジオロケーションマッチング:ドメインで判定できなかった場合の補完(IP-CIDR / GEOIP)。
- デフォルトルール(最終判定):一番最後に配置(MATCH)。
二、ドメインルール詳細:DOMAIN、SUFFIX、KEYWORD
ドメインマッチングは、Clash で最も頻繁に使用される分流手段です。アクセスしているサイトのドメイン名に基づいて、どのポリシーグループを使用するかを直接決定します。
2.1 DOMAIN:完全一致
- DOMAIN,www.google.com,Proxy
このルールは www.google.com にのみマッチします。例えば mail.google.com にアクセスした場合はマッチしません。特定のサブドメインに対してのみ特別な処理を行いたい場合に適しています。
2.2 DOMAIN-SUFFIX:サフィックス一致(最も推奨)
- DOMAIN-SUFFIX,google.com,Proxy
これは分流設定における「主役」です。google.com と、そのすべてのサブドメイン(www.google.com、images.google.com、drive.google.com など)にマッチします。ほとんどのシーンにおいて、SUFFIX を使用することが最も効率的でカバー範囲が広いため、強く推奨されます。
2.3 DOMAIN-KEYWORD:キーワード一致
- DOMAIN-KEYWORD,google,Proxy
ドメイン名の中に google という文字列が含まれていれば(例:google.co.jp、googleblog.com)、マッチします。ただし、マッチ範囲が非常に広いため、不適切なキーワードを指定すると、意図しない日本のサイトまでプロキシ経由になってしまう可能性があるため注意が必要です。
三、IP ルール詳細:IP-CIDR と GEOIP
アプリの中には、ドメイン名ではなく直接 IP アドレスにアクセスするものがあります。また、ドメインルールでカバーしきれないトラフィックも存在します。その際に必要となるのが IP ルールです。
3.1 IP-CIDR:IP 範囲マッチング
- IP-CIDR,1.1.1.1/32,Proxy,no-resolve
1.1.1.1/32 は単一の IP アドレスを指します。/24 のように記述すると、特定のサブネット全体を指定できます。ここで最も重要なのが、オプション引数 no-resolve です。
no-resolve を追加すると、Clash はそのルールを判定する際に DNS 解決を行いません。これはプライバシー保護とパフォーマンス向上の両面で極めて有効な設定です。
3.2 GEOIP:国・地域別マッチング
- GEOIP,JP,DIRECT
Clash は、IP ジオロケーションデータベース(通常は mmdb ファイル)を参照します。ターゲット IP が日本(JP)に属している場合、直接接続(DIRECT)されます。これは「日本のサイトは直結にする」という設定を、ドメイン名をすべて列挙することなく実現する最強の手段です。これも no-resolve と組み合わせるのが一般的です。
四、RULE-SET:外部ルールセットの実戦活用
設定ファイルの中に数百行もの DOMAIN-SUFFIX を手書きするのは現実的ではありません。2026年現在の主流は、RULE-SET(Meta コアでは rule-providers)を使用することです。
4.1 なぜ RULE-SET を使うのか?
RULE-SET は、数万、数十万ものルールを外部のテキストファイルに保存し、Clash の起動時または定期的に自動でダウンロード・更新する仕組みです。これにより、設定ファイルをシンプルに保つことができ、さらに有志によってメンテナンスされている高品質なルールリスト(例:Loyalsoldier のルールセット)を常に最新の状態で利用できます。
4.2 設定例
まず rule-providers セクションでソースを定義します:
rule-providers:
proxy:
type: http
behavior: domain
url: "https://example.com/proxy.txt"
path: ./ruleset/proxy.yaml
interval: 86400
次に rules セクションでそれを引用します:
rules:
- RULE-SET,proxy,Proxy Group
- GEOIP,JP,DIRECT,no-resolve
- MATCH,Proxy Group
五、実戦テクニック:精密な分流体系を構築する
堅牢な 2026年版 Clash 設定では、どのようにルールを組み合わせるべきでしょうか?以下に実戦的なテンプレートを紹介します:
rules:
# 1. ローカルネットワークのバイパス
- DOMAIN-SUFFIX,local,DIRECT
- IP-CIDR,192.168.0.0/16,DIRECT,no-resolve
# 2. 外部ルールセットによる精密分流
- RULE-SET,advertising,REJECT
- RULE-SET,private,DIRECT
- RULE-SET,apple,DIRECT
- RULE-SET,google,Proxy
- RULE-SET,telegram,Proxy
# 3. ジオロケーションによる最終防衛線
- GEOIP,JP,DIRECT,no-resolve
# 4. デフォルトルール(すべてに合致しない場合)
- MATCH,Final Proxy
この体系では、まずローカルネットワークの通信を排除し、その後メンテナンスされた高品質な外部ルールセットで主要なサービス(Apple、Google、Telegramなど)を処理します。さらに GEOIP によって、未知の日本の IP アドレスへの通信を確実に直結させ、最後に判別不能なすべての通信を海外プロキシに流します。この「ホワイトリスト+ジオロケーション」のロジックは、現在最も完成度の高いベストプラクティスとされています。
六、まとめとアドバイス
Clash のプロキシルール構文を理解することは、単に「繋がるか繋がらないか」の問題ではなく、インターネット環境を「いかに快適にするか」の問題です。DOMAIN-SUFFIX を適切に設定して判定コストを下げ、IP-CIDR の no-resolve で遅延と情報漏洩を防ぎ、RULE-SET でルールの自動メンテナンスを実現することで、真の意味での「シームレスなネット体験」が得られます。
もし、複雑な YAML 設定ファイルのメンテナンスが面倒だと感じたり、RULE-SET の更新がネットワーク環境のせいでうまくいかない場合は、高度に統合されたグラフィカルクライアントを使用することをお勧めします。私たちの Clash クライアント は、2026年最新の Meta コアを内蔵しているだけでなく、高度に最適化された分流ルールをプリセットとして提供し、ワンタップでの設定切り替えをサポートしています。カスタマイズを極めたい上級者も、手軽に使い始めたい初心者も、理想的な設定をすぐに見つけることができるはずです。